ひょうし/小説を書こう
恋情拒否
作:まかろん/大人 女子
(1)
夕暮れだった。
校舎裏に呼び出された彼女の瞳は揺れ、木漏れ日の中でじっと僕を捉えていた。
返答を欲す僕に向けたその表情は蝋人形を思わせるほどに動かない。
早く楽になりたいと願う自分がいることに気がついてしまって、更に時の流れが遅くなったものだから自然に辛さは増した。
やはり告白などするべきではなかったのだと気がついた頃にはもう手遅れだった。
様々な後悔と自虐に溢れた感情が脳内で渦巻く。
8月半ばの生温い風が僕らの頬を撫で、やっと彼女は口を開いた。
「ごめんなさい。気持ちは嬉しいですけど、私…」
予想通りの答えだった。
俯く彼女の髪が肩を伝い前方にずり落ちる。微かに花の香りが漂った。
「そうだよな、急にごめん。」
彼女に謝られると何故か逆に申し訳なくなってしまい、いそいそと頭を下げる。
なんて惨めなのだろう!
酷く苦い感情を奥歯の方で噛み殺して顔を上げる。
すると彼女は奇声に近い声をあげた。
「いえ。決してそうではなくて!」
目を見開くようにして焦り出す表情を眺める。彼女はいつもの様にはにかんだ。
彼女は花だ。
《松本柚希》
彼女は、凛とした柚子の花に例えられよう。

彼女の笑った顔は可憐で驚くほどに愛らしい。その美しさに魅せられてずっと想い続けてきた。残念なことに次に発せられる彼女の言葉で僕の中の理想の花は朽ち果てたのだが。

「私、好きな人がいるんです。」

なんてこと!
純粋で誰にも媚びず 誰にも好意を振りまかない彼女にすら理想の人がいるのだ。
2人が押し黙る空虚の中で彼女の腕時計の音がちりちりと砂のような音をたてた。
僕は微笑みを浮かべ、彼女にまた明日と別れを告げる。
彼女の好きな人なんていなくなってしまえば良いと脳は何度も繰り返した。
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