ひょうし/小説を書こう
彼岸花
作:ひー/中学2年 女子



ただひたすら美しい、と。
そう思っていた。

漆で塗られた木格子の向こうに、白い彼を見た。

ーー多分、私の罪は。

彼を、見てしまったことなのだろう。


******


「お前を身請けしたい」
紺野(かんの)がそれを口にすると、彼に組み敷かれた状態の月夜は、それはそれは、と微笑った。
「……野暮なことを申し上げますが、私はそう簡単に誰かのものにはなりませぬ」
要は、高いのだ。
月夜程の高級男娼ともなると、一晩買うのもおろか、身請けなどと云うと恐ろしい値段になる。吉原遊女よりも値が張る男娼をそのまま、つまり恒久的に買い取るのだから、高額になるのは必然であろう。ーーもっとも、こうも頻繁に彼を買っている紺野はさすがに只の庶民ではないーー庶民の中でも相当の富裕層だーーが、月夜を身請けするということは、いくら彼でも到底困難なことである。
「そんなことは解っているのだ、だから近頃私は楼閣(ここ)に来るのを控えているだろう」
頻繁に買えば、莫大な出費になるのは火を見るより明らかだ。
「そうでございますね」
月夜はふふ、と上目遣いに笑った。
彼のそんな些細な仕草にまで色欲を駆られてしまって、紺野は喰むように彼に口付ける。
「…んっ、」
小さく声を上げた白く華奢な月夜の躰からは、彼のものでも、紺野のものでもない香りがして、紺野は口を離すと顔を顰めた。
「……今日、私の前に、何人に抱かれた」
そう問うと月夜は薄く笑みを浮かべて、
「…さぁ、わざわざ覚えておく必要のあるものでもございません故、忘れました。……どのみち何人であろうと、貴方様と私の繋がりには何も関係はございませんよ。ーー他の男の話なぞやめてくださいな、いま私は貴方様のものなのに」
と紺野の耳元に顔を近付け、囁いた。
紺野は何か言いたげに口を開きかけたが、言葉を呑み込むように口を閉じた。
「……あぁ、今日は疲れた。ーー抱かせてくれ、歯止めが効きそうにない」
その言葉に月夜は相も変わらず妖艶な笑みで返すと、
「どう抱いて下さっても構いませぬ、貴方様は今夜私を買われたのですから、」

ーーお好きにしてくださいませ。

紺野は深く溜息をつく。
ーーきっと私は、この者にあそばれているのだ。
緩く結ばれた彼の腰帯を解く。
依然、彼は薄く微笑んでいた。
ああ。
ーー私は彼に依存しているのだろう。
図ってそんな風に誘っているのだろうが、そうと思えない自分が恐ろしい。どんな男にもそれを容易に口にする彼が恐ろしい。

彼が行為のときに発する抑えた小さな声も、頬を伝う水晶のような涙も、細く華奢な躰も、すべて。

すべてを、自らのものにしたいと思った。
紺野は片手で顔を覆う。彼ーー月夜が、そして自分が、恐ろしい。

“彼を見てしまったこと”が、自分の運命を大きく変えてしまった。
手放すことは、もうできないのだろう。好意ーー性愛を持つのはこんなに容易だというのに。



「ーー嗚呼、私はお前を愛しているよ」

ふふ、と艶(わら)う月夜の声がして、紺野は燭台の火を消した。



…終







あとがき
どうも、こんにちは、ひーです。
重いですね。
なんかただただ重くて艶かしい小説になりました。大失敗。
単純に客から見た月夜を描写してみたかっただけなのです(笑)。紺野の愛が重すぎるせいで、思わぬ方向にずれていきましたが←
もっと健全でハッピーエンドなBL書きたいです。
彼岸花について。
正直、花言葉はあんまり気にしてないです。『想うはあなた一人』とかっていうのはなんか重い感じよりもっと切に聞こえるじゃないですか() まぁ大体重視したのは毒の部分。彼岸花って実は全部の部位に毒があるんですよ〜!! 何故墓地に多く埋められているかっていうのは、昔は墓地に死体が直接埋葬されたことに関わっているらしいです。死体をもぐらや鼠が食べてしまわないように、墓地の近くに有毒な彼岸花を植えたのです。死人花ってよく言いますよね。
どうでもよすぎる話ですが、紺野って名前(苗字です)を何故かめちゃくちゃ気に入っています。
最近は多忙極めてます。あとがきクソ長いですすみません。
コメント、アドバイスお待ちしております(^o^)
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