ひょうし/小説を書こう
水槽の泡と消えたい少女2
作:藍和/中学1年 女子

「あ、ひがっちょ」
 私は偶然にも最終敵と遭遇してしまう。午前十時三十分、総合病院の第二棟より。
 ひがっちょは私を認めると顔を傾けて、面倒ごとのサインをする。あぁごめんなさいね、面倒でしたね、いんちょー先生に言い付けてやるんですからね、という私にそれほどの権限はあるはずもない。一介の死にたがりごときは所詮彼らにとって金銭を絞りとる鴨でしかないのだ。なんといたたまれない白き虚棟。
「なんだ、また死んだのか」
「なんとねえ、今回で通算十三回目の自殺でさ」
 私は多少の誇りを含んだ口調で言う。胸を張る。ひがっちょなら気づいてくれるだろうという淡い淡い恋心にも勝る期待である。恋心なんて小四の二学期でゴミ箱に棄てたわ馬鹿野郎。
 ところで、この十三という数字は私にとって第二の誕生日ほどに重んじるべき数なのである。十三回目の自殺を未遂った今日の私は、未遂ったという本来沈みこむべき思考を十三という数字で押し上げている。
「なに? どうせ馬鹿馬鹿しい誇りでも持ってンだろ。これだからファッション鬱は困るんだ」
「ファッションなんかじゃないよ」
 鬱にファッションもパッションもあるものか。あるのは恥じらうべき記憶ばかりじゃないか、という点で私は鬱ではない。そう、ファッションで行動するやつらなんてクソだ。ファッションオタクにファッション写真家、ファッション物書き、ファッション読書家、ファッション鬱も例に漏れなく。他人に影響されること自体は悪いことではない。ただそれを全面的に押し出して他人にレッテルを貼らせる神経がどうかしている。
 しかし、ここで自身を振り返る。そして気が付く。私は未だにファッション死にたがりの粋を脱していないことに。なんだよ、さっきファッションなんかじゃないと首を締め切った手前、私の行く宛は地獄くらいのもんだろう。
「あのね、ひがっちょは十三日の金曜日なんて言葉を知らないわけ? あのユダ様を知らないわけ? 社会科の授業だけ評価が2だったりしちゃったわけ?」
「ああ、忌み数ってこと」
 ひがっちょはよれた白衣の裾を伸ばした。土足の靴跡だったりとか、ちょっとした埃だったりとか、衛生的によろしくないものが寄せ集まってひがっちょの白衣が構成されているような気がする。もちろん問診様のまっさらな白衣は何着かあるらしいけれども、彼はここ最近不衛生な集合物だ。
「俺、評価ではオール4以上固いから。授業態度クソでもテスト点が良いから」
「死ねろ」
 私はぞんざいな悪意をふっかけて日が落ちかけた心持ちをどうにか取り戻す。外気もとうとう濃くなってきている。空気が密になって、その時々の香りがする。それらの全てが排気ガスの影響ならば集団自決は容易い。

『……世古日菜里様、第五診察室へご入室ください』

「呼ばれてますけど」
「わかってるよー、ていうか第五って今日誰なの? 第六のひがっちょがいるってことは、もう五人だけで充分だって言われた?」
「……待合室が大変込み合っているので、ただのファッション鬱でお越しの仮患者様はどうぞ早急にアナウンスの指示通り行動してください」
 ああ、なんて愛想の無いやつなんだ。
 私は最終的との遭遇を、最終にしてしまうことはとうとうできなかった。何事にも、裏というものはついてまわるからである。
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