ひょうし/小説を書こう
スカーレット・アイ
作:黒/6年生 男子
桜は散ってしまっただろうか。


蝉の声はもう聞こえないのだろうか。


紅葉は落ちていっただろうか。


雪降る夜は、過ぎただろうか。


太陽が照り輝く昼はあっただろうか。


はたまた、月が輝く夜はどこだろうか。


全ての情報を知り得ない、地下室の中で思う。


この地下室に閉じ込められて何年が経つか分からない。


衣食住は、一応揃っている。


こちらから開けることが出来ないリモコン式の鉄扉が目の前に一つ。


机や本、電球、チェス盤などがある。


床に散らばる、実験用具。


なんてことを考えていると、不意に機械音が鳴り出す。


これは、鉄扉が開く音だ。


空気が変わるのが分かる。


外からの光がやけに眩しく感じる。


「久しぶりだな」


野太い声が、地下室に響く。


「そうなんですかね?よく分かりませんが」


「はっ、冗談は結構だよ」


内心舌打ちをする。


「ところで今日はどうなさいました?」


できる限り差し障りない言葉を返す。


「少し落ち着かなくてな。チェスでもしないか」


相手はこちらの返事を待たずに席に座る。


「さぁ、早く来たまえ」


「先日頂いたお菓子を持ってきましょうか?」


「あぁ、頼むよ」


心の中で喜びつつ、冷静を装ってお菓子を運ぶ。




「お待たせしました。さて、やりましょうか」


相手の近くにお茶、クッキー、飴玉を置く。


「わざわざありがとう」


チェスを始める。


「ところで。この地下室に入ってから何年ほどになるかな?」


「分かりません」


「まったく。仕方ないな。今日でぴったり15年だよ」


「はぁ」


なんとも言えない相槌を返す。


「だから落ち着かないというのもあるのかね。」


「どういうことですか?」


「君のお母さんがなくなったのも15年前だったかn」
「チェックメイト」


聞きたくない話だった。


「強くなったな」


「ありがとうございます」


「もう一局頼むよ」


「ぜひ。お菓子などにもお手をつけてください。なかなか美味しいですよ」


「そうか。頂くよ」


相手が第一手を打つ。


「君のお母さんがなくなった頃の話は覚えてるかい?」


「いえ、覚えてません。気がついたらここにいました」


まったくの嘘をつく。


「君のお母さんを殺した罪に私が問われているというのは分かるかい?」

「…チェックメイト」


「なんだと?」


鼓動がうるさく鳴り響く。


「君、本当に強いな。君のお母さんに似てるよ」


「…ぅあ…」


小さく嗚咽が漏れる。


あと、ほんの少しの我慢だ。


「もう一局だ。いいな」


無言で頷く。


「少し頭が回らなくなってきたようだ。力も入らない」


少し、ほんの少しだけ微笑む。


「どうなされました?」


「睡眠欲が襲ってきた。今まで緊迫していたからか」


息をつき、語りかける。


「実は、あなたが飲まれたコーヒーには、睡眠薬が入っています。何故かわかりますかね?」


「なぜだ?」


「仕方ありません。説明致しましょうか。」


相手を縄で拘束し、動けなくする。


もちろん、抵抗はされない。


「あなた、先程言いましたよね?お母さんを殺した、と」


「まぁな」


「私のお母さんが亡くなった死因、わかりますかね?」


「毒死だ」


「そう。私のお母さんが亡くなった日、そしてお父さんが失踪した日の前日、あなたは私の家を訪ねてきた」


相手は無言で俯くだけだ。


「あなたが青酸カリを盛ったんですよね?ちがいます?」


緋色に染まっているその目を見つめる。


「私も同じことをさせていただきましたが。あなたが口にした飴玉、青酸カリが盛られてます」


相手を嘲笑する。


「あなたは私のお母さんを飴玉に盛られた毒で殺し、そして幼かった私を誘拐したんですよね?」


「うるさい」


相手の野太い声が蘇る。


「青酸カリか。まぁ仕方ないわな。さらに、ロッカーの中の紙袋。あれは時限爆弾か?」


「いかにも。よくお気づきで」


「なにか、色々とおかしいことがないかい?」


相手は真っ赤に染まった目をこちらに向ける。


「なぜ火薬があるのだろうか。なぜ青酸カリがあるのか。疑問に思わないのかい?」


「そして、なぜ貴様の親が消えたのか」


ちらっと腕時計を見る。


「さぁ?あなたを殺す理由ができたからよかったですけどね」


「時間が無いようだな。簡単に説明してやろう」


息をつき、説明を始める相手。


「お前の母に依頼されたんだ。DVする父から息子を
守って欲しい、ってな」


「は?」


「つづけさせてもらう。私の命はいらないから、息子を匿ってくれと。」


「今お前の父親は病院の中だ。精神の治療に励んでいる」


「そして、床に散乱している薬品各種。これは私がばらまいたものだよ。お前がわたしを殺すことを見込んでな。」


「なぜそんなことを?」


「いくらお前のためと言えども、私が監禁したこと、そしてお前の母を殺したと思われているのなら、私に殺意が芽生えるはずだ。違うか?」


何も違わない。


「頃合から見て、お前が実行に移すなら今日の記念日だろうと思ってな。最初から死ぬ覚悟は出来ている。ほら。渡すよ」


渡されたのはバタフライナイフだった。


「丁度いい。爆発で死ぬより、お前が刺した方が気持ちが良いだろ?」


腕時計を確認する。爆発の時間まで1分もない。


「ならそうさせていただくよ」


自分の手首にバタフライナイフを押し付ける。


肉がえぐれる。


「まっ!何をやっているんだ!」


そこに青酸カリが盛られた飴玉を押し付ける。


「分かるだろ?自殺さ。」


秒読みが始まる。


「15年間ありがとうな。また来世で会おう」


同時に爆音が鳴り響き、轟く断末魔の声。





「チェックメイトだ」


雲ひとつない空の下、陽炎揺らめくアスファルトと、騒がしい蝉の声が聞こえた。
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