ひょうし/小説を書こう

作:芯筆/6年生 女子
「まぁ真湖ちゃん!よく来たね、上がっていきぃ」
私にはどこの方言なのか分からない訛りを少し残して私の伯母は喋る。この地方の特有の性格で大概大らか、朗らかだ。
「お邪魔しまーす」
朗らかさは私にも受け継がれていて他人受けが良い私はちょくちょく伯母の家に行っては可愛がられていた。
その頃私の目当ては伯母ではなく、10こ年上の従妹だった。
「依林(いーりん)ちゃん、来たよ!」
「やっぱ真湖か、だろうと思ったよ」
依林は中国と日本のハーフで、中国語が実は話せない高校生だ。今年で17になる。
「あー、これ上げるわ」
依林が放ったのは黄色の飴玉だった。
「貰っとくけど・・・ありがと」
私はポケットに飴玉を滑り込ませた。
「何かする?」
依林は座っていたキャスタ―椅子を回して机の隣の棚を覗いた。
「花札しよー!」
私が言うと依林は苦笑して言った。
「負けるくせに」
「楽しいからいいの!」
依林は花札を棚から出してカードを並べて配った。二人でやっても仕方がないが小2にはちょうどいい。
真湖の言語能力が少しばかり高いのは依林のおかげだった。花札をやった時、「シカト」という言葉が花札のカードから由来していることを小1で知った。そこから俄然興味が湧き色々知ったのだ。
知識豊富な依林と過ごす時間は濃厚で時間の流れがゆっくりだった。時間がゆっくりと流れる依林の素朴な部屋が好きだった。

「依林ちゃん、東京に出るんですって」
母からそう聞いたのは3年後、あの日以来忙しくて依林に会えていなかった。正確には狭い集落の中で顔は合わせていたが部屋に上がり込む時間が作れなかったのだ。
「東京?一人暮らしするの?」
小5にもなればそれくらいの常識はある。いつか依林も出ていくのだろうなと漠然と感じていた。寂しさは有ったが仕方ないな、という諦念もあったのだ。
「いつから?」
「卒業したら」
とすると1か月後だ。高校卒業後専門学校に通いデザインを学んだ依林は20歳で卒業し東京で一人暮らしを始めるのだろう。それはそれで頑張ってほしい。
「ふーん」
それまでに一回会えるかな。

黄色い飴玉が唯一依林と会った証拠だった。依林は見つかっていない。
依林、貴方はここにいたのね・・・
多分、ずっとここにいた。ずっとここから離れていなかった。
私は既に老いた体を持ちあげて立ち上がった。依林が東京に出てから私は3回会ったがそれ以外は会えず、そのまま寿命で逝ってしまった。
幸せな人生を依林は歩んだ。私もきっと不本意な人生は歩んでいない。依林が死んでから私は故郷に戻り、もと依林の家を訪ねて、今、3度目だ。
老いた依林は見ていないから、姿を探して。

依林は微笑を浮かべてキャスター椅子に座り飴玉を投げた。
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