ひょうし/小説を書こう
見えない姿 1
作:くっちゃむ博士/4年生 女子
はるの姿が消えた。日曜日、はるのお母さんから電話が来た。まい子は、母に電話だよと言われ、電話に出た。何かが起こったのだ。決まりきったような退屈な日常が突然ドラマティックに変わるときの、不安と期待がないまぜになったような、要するにシリアスにワクワクという気分で、まい子は電話に耳を澄ました。
まい子は話が終わったので受話器を置いた。しかし、まい子の目は、ひどく疲れていて生気がなく、顔も青ざめていた。「何があったの?」まい子の母はおそるおそる訊いた。まい子は深くためいきをついた。「はるが消えたの。行方不明だって。もしかしたら⋯。」そこまで言ったとき、突然、まい子の回りの世界から音と色が消えた。耳の奥でジンジンと血液の流れる音がした、ように思った。
失った音と色は、それからしばらくして徐々に戻ったけれど、決して元のようではなかった。二度と再び、まい子の世界が元に戻ることはなかった。
まい子はユリ椅子にすわり、腕で目の上を覆った。ひどく体が重い。衝撃だった。まい子は腕をずらして、窓の外を見つめた。雨がぽつぽつとそこに水滴を付け始めた。昨日、テレビが梅雨入り宣言をしていた。いや、テレビではなく、気象庁か。
雨はだんだん強くなり、窓越しの景色が見えにくくなった。
まい子は体がどんどん重く沈み込んでいくように感じた。そして二年前の、季節が初夏へと変わり移るちょうど今頃、はると過ごした1か月余りのことを、急にすごい力で体ごとぐんぐん引き戻されるように思い出した。部屋や庭の匂いや、光線の具合や、空気の触感のようなものが、鼻孔の奥から鮮やかに甦るような、そんな思い出し方で。
はるは真面目な顔で「私は魔女みたいでしょ」と打ち明け、それ以後、二人だけのときはいつも「はる魔女」と呼ぶようになった、あの1か月余りのことを。



                                       続く
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