ひょうし/小説を書こう
一冊の本 後編
作:hemu/中学3年 女子
翌日、俺は学校帰りに図書館に寄った。
館内で深夏の姿を探すと、昨日と同じ席に深夏は座って、本を読んでいた。
昨日と同じように深夏の前の席に座ると、深夏は本から目を外し、微笑むと、

「こんにちわ。学校帰りですか?」
「はい。少し、宿題をやってしまおうかと…。」
「分からないところがあれば言ってくださいね?教えられますよ。」

そう会話を交わすと、俺は宿題を、深夏は読書を始めた。
時折俺が頭を抱えると、深夏が読書を中断し、教えてくれた。深夏の教え方は本当に上手く、すぐに理解することができた。
俺達はそれから毎日のように図書館で会い、お互いのおススメの本についてや、感想を言い合ったりした。俺の定期テストが近くなると、深夏は自分のことのように真剣になって俺に勉強を教えてくれた。

ある日

「そういえば、俺、明日から夏休みなんだよね。」
「そうなの?どこかに出かけたりするの?」
「いや、今の所はないかな。」
「そっか。」
「深夏は?」
「私は…」

深夏は少し悲しそうな顔を一瞬見せたが、すぐにいつもの明るい顔に戻ると

「私はいつも通り、図書館に通うつもりだよ。」
「ふーん…じゃあ俺も来ようかな…。」
「大歓迎だよ。勉強教えようか?」
「頼もうかな。」

俺は、深夏の悲しそうな顔に疑問を持ったものの、深夏と話しているうちに忘れてしまっていた。

翌日、図書館に行こうとしている所を母に引き留められた。

「ちょっとあんた‼どこ行くつもりなの⁉」
「え、どこって図書館だけど…。」
「何馬鹿言ってんのよ。今日はこれからおじいちゃんのお見舞いに行く約束でしょ⁉」
「え、でも友達との約束が…。」
「今から連絡して、今日はやめといてもらいなさい。」
「…相手、ケータイ持ってない。」
「えぇ⁉もうあと十分で出発するのに‼」
「……母さん、近くの図書館まで車回して、待ち合わせ場所が図書館だから…。」
「分かったわ。今日は泊まりになるかもしれないから、着替えとかまとめて‼」
「……あぁ。」

十分後、母が運転する車がいつもの図書館に着いた。俺はすぐに車を降り、館内へ走った。
そこには、深夏の姿が

「あ、こんにちわ。あのね…。」
「すまん!」

俺は、深夏の言葉を遮り、事情を説明した。

「そう…。私は大丈夫だよ。でもね、あの…」
「お兄‼お母さんが早くって!」
「あぁ、分かった。で、深夏、なんだ?」
「あ…ううん。なんでもない。行ってらっしゃい。」

俺は、なにか引っかかったが、弟に手を引かれてしまったので、行くしかなかった。俺は、この日を、深夏の話を聞かなかったことを一生後悔することになった。
俺はその日、祖父の見舞いの時も何をしている時も心のモヤが取れなかった。俺は、いたたまれなくなり、翌日の始発で母達より先に帰ることに決めた。

電車に揺られている間、嫌な予感がして、気が気でなかった。
駅から全速力で走り、図書館内に入り、いつもの席を見るがそこに深夏の姿はない。
もしかしたら、まだ時間が早いから来てないかもしれない、という期待を胸に閉館まで待ってみたが、その日、彼女が現れることはなかった。
もしかしたら、今日はきっと、そんな事を考えながら何日も何日も深夏を待ち続けたが、あの日以来、深夏が現れることはなかった。
そうして、俺の時計の針は少しづつ速度を落とし、ついに止まってしまった。





あの日のことが忘れられないまま、二年が過ぎ、俺もそろそろ高校を卒業する日が近づいていた。
卒業式前日、何を思ったのか、俺の足はあの図書館へ向かっていた。彼女がいるわけないのに。
館内に入り、癖になってしまったのか、あの席に向かおうと足を一歩出した瞬間。

カチッ

見覚えのある後ろ姿。変わらない綺麗な黒髪。まさか、そんな馬鹿な。だって彼女は…

彼女は何かに気づいたのか俺の方を見て一言。

「こんにちわ。」

カチッ

俺の時計の針は再び大きく動き始めた。
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