ひょうし/小説を書こう
【改訂版】佐賀駅で銃を握るには 1
作:藍和/中学1年 女子

 その居酒屋【エンブ】は業界の内で中々有名な取引所であった。
 何でもかつて太宰治、坂口安吾、織田作之助が落ち合ったバー【ルパン】を模した形容らしく、怪しさでいえば満点である。しかし狭苦しい内装のため、警察の捜査から除外された店の一軒であった。
「しかぁし、こぉんな良い場所がぁ、警察にも知られてにやぁいなぁんて、あいつらも堕ちたもんよぉのぉ」
 朽刃伍両(クバゴリョウ)は酒酔いの波を体に押し込められずにいた。連れである彼の部下達も、朽刃の言動には胆を冷やされる。
「ゴリョウさん、幾ら警察が来ないといえ、周りは派閥の取引人でうじゃうじゃなんですよ? 僕ら一般客の設定なんですから」
「けどものぉ……日本酒の攻撃力にはぁ勝たれんのぉ」
 そしてまたグラスを口に運び、今度は一度に飲み干した。「大将おかわりぃ!」と言うと、小太りで人の良さげな大将は机を指差した。
「あんさん、何本目やと思ってはるんか。もう十本目や十本目! あんたらも、上司の身ぃ安じるんなら酒くらい止めさせてみろ!」
「なんやとぉ! 毎回毎回腹の足しにしたってるやないかぃ! 俺の金や、文句あんのか!?」
「そないゆぅなら金払え! 幾らつけにしとるんかお前は!」
 その口論は辺りの注目を拐っていた。取引中のバイヤーまでも振り返り朽刃と大将とのやり取りを凝視している。これはまずい、朽刃の弟子として派閥の重役を勤める面仕生公(オモジキコウ)は自分がどう行動すべきかという点について悩んでいた。
 確かに止めねばならない。けれど、そんな度胸は自分に無い。人前に出るなんてもってのほかだ。こんなに注目を集めてしまっては足を動かすことすらできない。
 そうこうする間に口論は掴み合いにまで発展した。
 辺りのバイヤーは口を揃えてぼそぼそと陰口を言う。
「あぁ、あの気性の荒さは」
「そうか。朽刃の一行か」
「どうやら戦争を企んでいるとか」
「まあ、あそこの頭は気鋭であるし」
「殺し屋の質は最近向上しているらしく」
「可愛らしい青少年を集めて人身売買なんかを行っている非道ですよ」
「苑庭さえ汚さなければ火がつくことはないだろう」
「さっさと潰した方が良いのでは」
 敵が多いな。面仕は周囲の声に耳を澄ませた。朽刃に責任があるわけではないが、これは酷い。
 更に立ち上がり難くなった。
「朽刃さぁん」
 【エンブ】の入り口から声が聞こえた。
 内側にたっぷりと毛が詰まったコートと動き易い仕事着、つなぎだろうか。緑がかったつなぎにコートを羽織っている。くるくるとしたパーマが印象的な、中学生にも見える青年であった。
「おぉう、シゲン! きぃてくれ! こいつが俺の酒をなぁ」
「シゲンちゃん、久し振りやのぉ。大きゅうなってから」
 朽刃と大将がシゲンの名を口にした瞬間、【エンブ】店内は凍り付いた。
 シゲンは首を傾けた。
「大きくなってないよぅ。変わらないよぅ。酷いなぁ」
 それでも笑顔を崩さない。
「朽刃さんも大将さんも、昔はタッグ組んで頑張ってたじゃない。昔を思いだしなよぅ」
 気付いているのは、面仕だけであった。
 シゲンの後ろに数十名の黒兎が控えている。
 黒兎というのは、シゲンが統率する暗殺者集団であった。黒スーツを来て、機関銃を抱いている。
 暗殺者に必要なスキルは正面戦闘であると、その教えを見事に修得した連中であった。
 そんなやつらが集まっているとすれば。
 面仕は机の下に身を屈めた。
 殆ど賭けに近い行動である。
 シゲンは右手を高くかがげる。
 鉄製の義手が顔を出した。
「構え」
 朽刃すら呆気にとられている。
 その場の誰も、動けなかった。
「撃て」
 銃弾の雨は容赦がない。披弾した者は糸が切れたように崩れ落ちた。先刻まで激しく掴み合っていた朽刃も大将も、今では床に伏している。
 誰一人として反撃ができなかった。
 全てが終わったあとの静寂には、恐怖すら覚えられる。
 


あとがき((
どうもどうも。
改訂版です! なんやねんですね。
それでは


 
 
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