ひょうし/小説を書こう
聖なる夜に届けたもの
作:がんえん/中学2年 女子
「あーっ、いいなー。」
彼女はリビングルームに足を踏み入れた途端、脚の低い硝子のテーブルを指さして言った。
「私もワイン飲みたいー!……って、何これすっごい高そう……。」
当然のようにソファに座り、まじまじとテーブルの上を見つめては独り言のように何かを呟いている彼女。
仕方なくキッチンに行きワイングラスをもう一つ持っていけば彼女は満面の笑みを浮かべてそれを受け取った。
何か食ったのかと問えば、なーんも、と能天気な答えが返ってきた。
「お前、悪酔いするぞ。俺は明日もロケあって朝早いから、世話してやらないからな。」
冷たく言い放ち、ちらりと彼女を見た。
「別にいいよ。酔うほど飲むつもりないし。というか……なんでここ来たか、わかってるくせに。性格悪いね、ダーリン?」
意地悪く笑った目が俺の目と合う。
合った瞬間、目の前まで彼女が迫る。
近い。
いつでもその物欲しそうな唇を奪ってしまえる距離だ。
何て、呑気に考えてる暇もなく。彼女はとうに俺の上へと乗り始めていた。
「……ワインが飲みたいとか言ってなかったか?ハニー。」
「んー?ふふ、気ぃ変わっちゃった。」
慣れた手つきで俺に触れ、頬に口づけを落とした。

そして、酔った勢いで気がついたら乱れた彼女を組み敷いていた、なんて弁明を何とも言えない罪悪感と共に脳内で繰り返していた。


決して彼女からも俺からも口に口を合わせることはしない。それは俺のせいであって、彼女はその壁を超えずに留まることができる女だ。

だが、と俺の腕の中で一糸纏わぬ姿で小さく寝息をたてている彼女を見て思う。
うっかり恋愛禁止の芸能事務所に所属してしまって。
この女はなんだったか、裏方の地味な仕事を延々やらされていた不憫な奴だった気がする。今もそうなのだろうが。
その分俺は楽なのだろう。ただ笑顔を振り撒いて愛想よく行儀よく座っていればいいのだから。
どういう出会いだったか、なんていうことは話せるほど覚えていないが、恋愛禁止という括りの中で、俺は彼女と出会ってしまった。
出会ってしまっただけ。
そして、今でもこれは恋愛ではなく欲を満たしているだけだと、唇への接吻をせずに自己暗示をかけ壁をつくっている。それがどれだけの厚い壁なのかなんて知ったことではないが。
――何だかんだで、酒のせいにしてしまうんだよな、俺は。

考えている間に、するりと腰にまわった彼女の手が背中をなぞり、肩にかかった。
「…………おはよ。」
昔の照れくさそうに言ったものとは違い、余裕のある、それでいて疲れたような、そんな声で彼女は言った。
「おはよ。寒くないか?」
「別にぃ。ダーリンこそ、肩、冷たいよ。」
彼女の手を肩から退け、別に、と返して起き上がった。
「……もう行っちゃうの。」
「言っただろう。早い時間からのロケなんだよ。」
全身の倦怠感がどうにも鬱陶しい。
「……そっか。」
また疲れたように言う彼女を尻目に服を持って部屋を出る。

風呂場でシャワーから出る冷たい水を勢い良く全身に浴びた。そうしたところで気怠さは流せるものではない。


決して愛でなければ好きでもない、全て酔った勢いで起こった事故だ。なんて。
そろそろこの暗示が効かなくなりそうなのは、俺だけなのだろうか。





世は光に彩られていた。
12月24日、どこを見てもカップルが肩を寄せあっている。
長いロケが終わり、気づいたときには辺りが暗くなってイルミネーションの光がよく映えていた。
幸せ絶頂とでも言うようなカップルの波。居た堪れない空気から逃げるように駅へ向かう。
――いや、違うな。
居た堪れないと言うよりかは、羨ましいという方が正しいのだろう。
――いつから俺はこんなに弱気になったんだか。
悶々と考えながら自宅へ向かう足取りが、光り輝くガラスケースの前で止まった。
それは駅に向かう明るい道に並ぶ有名ブランド店の一つだった。
ガラスケースの向こうには結婚指輪やらペアリングやらが丁寧に並べられている。
――今日、クリスマスイブか……。
丁度良い口実を作れそうな絶好の日だ。
徐に携帯を取り出して通話画面を開き、慣れた相手に電話をかけ、呼び出し音が切れるのを待った。

「…………おい。」

繋がった、そう思った途端に声を発する。

『ちょ、なに突然。こわいなぁー、どしたー?』

気の抜けた声の隙間から慌ただしい人の声や物音が電話越しに漏れてくる。裏方の仕事はまだ長く終わらないように聞こえた。
「お前、今日は何時に俺の家に来るんだ。」
『いや、今日行くなんて一言も言ってないんだけどね。でも、あと一時間くらいで終われそう。なに?なんかあるの?』
楽しそうな彼女の声が耳元で響く。

――……口実をつくるよりかは素の俺でいた方が喜んでもらえるのだろうか。

何故そんなことを思ったのか、なんていうのは何の根拠も無いためわからないが。
「あぁ、あるぞ。とっておきのやつがな。あとお前、今日は素面で来いよ。」
『へぇー、ほんと?やったー、たのしみにしてるね、ダーリン♡』

電話を切って、店に入る。
もしかしたら、これからの芸能生活は崩壊するかもしれない。
それでもいい。この曖昧な関係を本物のものにしたい。壁を壊してしまいたい。
そう願ってしまう程度に、どこか吹っ切れた俺は彼女に惚れていたのだった。




12月24日
それは、酒が無くても想いを伝える程度の勇気を持つと心の中で誓った日。





あとがき
お久しぶり、はじめまして、こんにちは。がんえんです。
久しぶりの投稿ですが、短編であり恋愛でありベタなクリスマスネタでありつまらんもんになっちゃいました。
これのキャラにはモデルとなるキャラクターがいたりするんですが……似てるの口調だけなんですけどね。
恐らく言っても知ってる方いないと思うので伏せますが←
なので半二次創作な部分があったりなんなり。あ、ストーリーとかはどこからも拾ってませんよ(^o^)ご安心ください。
クリスマスですね。←
私は1人寝て、食って、これ書いて、寝ていました。非リアの極みです。
皆さん良いお年を。(今日はよく話が飛びますね。)
来年もどうぞよろしくお願いします。

ここまで読んでいただきありがとうございました!
コメントお待ちしております。
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