ひょうし/小説を書こう
宵闇、藍色牡丹。其の五
作:ひー/中学1年 女子




『月夜様は、いつから此処の囚われなのですか』

呉羽がそう訊いてきたとき、ふと忘れかけていたーーいや、忘れようとしていた、とでも言おうかーー昔を思い出した。
でも、それはあまり綺麗な過去でもなくて、口に出すのは憚った。ーー呉羽にそんな話をしたところでさしたる問題は無かろうが、過去の話は嫌いだ。

『月夜様の眼って、何故そんな色をしているんでしょうね?ーー綺麗だなぁ』

と、いつだったか呉羽が言った。そんなことを言われたのは二回目ーー1回目は水無月から言われたーーだったので、何故そう思うのか問うと、

『だって、玉みたいではないですか。紅玉。僕は一回しか見たことないですけど、あれは綺麗だったなぁ。でも、日本では見れないんですね、あまり。僕も、西洋商者が来たときに一回見たっきりです』

と、答えてきた。紅玉ーー自分は数回程見たことがあるが、あんな透明な紅だっただろうか、自らの眼は。水無月には『血の色だ』と言われたから、あまり実感が湧かない。
ああ、でも。
もう一人、この何処ぞの化物のような容貌を、なんの裏もなく、ーー売物としてでなく、美しいと言った人がいた。

その人の名前を、まだ忘れずにーー忘れようともせずに覚えているのは、あれがあたたかな記憶だったからか。


******


「どこまで行くの、結(ゆい)」
そんな僕の言葉を無視して、目の前の女子ーー結は僕の手を引っ張っていく。
「おしえなーい」
「なんで?」
すると彼女はにっこりと笑って振り向き、
「柚(ゆず)に見せたいものがあるの」
「見せたいもの?」
「そう、見せたいもの」
でも、人里までは下りていけない。結はまだしも、僕が行ったら殺されるl
裸足は雪の冷たさで感覚がない。靴は盗られた。
「とっても柚に似てるの。とってもよ、とっても。きっと気に入ると思うよ」
「僕に似てるもの?ーーそんなのあるかなぁ」
「あるの。作ったの」
結は寒いでしょ、と言って自分の首巻を僕に巻いた。
「柚はそれ似合うねー。柚は綺麗な顔してるもの、私より似合うよ」
そう言いながら、どこか知らない所へ走っていく。僕と正反対の、真っ黒な髪の毛を靡かせて。
「ついたよ、ほら、見て、これ!!!」
結が指差すところには、小さな雪兎があった。
二つの目は朱い南天、耳は南天の葉、体は雪でできているそれを、結は愛おしそうに撫でる。
「ね?柚にとっても似てるでしょう?まっしろな髪で、まっかな目。ーーふふ、そっくり」
結はくすくすと笑う。
「柚のまっかな目は南天に似てるの。とってもきれい」
初めてだった。
この化物の容貌を、『きれい』と言ってくれるのは。
「……結は、」
「うん?なぁに?」
「僕のこと、怖いとか、気持ち悪いとか、ばけものだとか」
だんだん小さくなっていく僕の言葉を、結はきょとんとした顔で聞いていた。
「思わないの」
そう問うと、結は二度三度と瞬きをしてから、
「思わないよ。だって、柚はきれいだから。ばけものじゃないよ」
とはっきり告げた。
「だって、あなたはかみさまの雪兎だもの」





彼は昏々と眠り続ける。ーーーーーーーー







宵闇、藍色牡丹。







夢をみていた。
一面の白銀世界から目を覚ましたとき、其処は既に見知った殺風景な天井だった。
ーーもう少し、あの夢を見ていてもよかったかもしれない。
そう思ったのは、呉羽には黙っておく。
「月夜様?」
「あぁ、」
呉羽が上から覗き込む。
「どうされました?」
「ーー夢、…夢をみていた」
「夢ーー?」
不思議そうな顔をする呉羽に微笑いかけて、瞑目する。ーーでも、其処にはもうあの白銀世界はない。ほんの少しだけ、期待していた。
「どんな夢ですか?」
呉羽も微笑った。月夜は瞑目したまま、ひとつ息をつく。
「……そうだな、どんな夢ーーしあわせなゆめ、かな」
「しあわせなゆめ、ですか」
「うん」
部屋は相変わらず静寂に包まれている。二人とも無言でいれば、外の鳥の声がはっきり聴こえてくるぐらいである。
朝だ。鳥は活発になる。その騒がしさが余計、この静かで殺風景な部屋を浮きだたせていた。ーーまるで、別世界の部屋のように。
「ーー雨はあがったのか、この様子からすると」
「ええ、昨日一晩中降り続けていましたけど。梅雨も明けそうですね、紫陽花はまだ咲いてますが」
窓開けますか、と言って呉羽は立ち上がった。木窓を開けると、鳥の声が一層強く聞こえた。
「起きる」
肘を突いて起き上がろうとすると、呉羽は振り返って呆れ顔をした。
「一人で起きるんですか?……まだ無理ですよね、痛いんじゃないんですか。僕手伝いますよ」
「…できるって言ってるじゃん」
呉羽は近寄って、しゃがみこみながらため息をつく。
「とか言っといて結局いつも起き上がれなくて困っているのは誰でしょうね」
はは、と月夜は笑った。
「誰だろうね」
「とぼけないでください」
背中に手を回されて、軽々と上半身を起き上がらせられた。
「だいぶ痩せましたね」
「そうか?食べて寝てるだけなのにな」
「そういう人間なんでしょう、きっと」

月夜は木窓の外を遠く眺める。
「なんだろうな、」
「え?」
「しあわせなゆめ、って多分どこにもないんだ」


ーーなのに、俺はそれを欲している。








矛盾と願望。



続…?

あとがき
どうも、こんにちは、ひーです。
テストが終わってパリピしてます(大嘘)。
嘘です、生徒会誌の編集とそれに載せる絵の提出期限と課題に追われています←
そんな中仕上げた五ですが、雑さがにじみ出ていておうふってなりますね。前半の部分はどういうものかはご察しください。また追い追い分かってきます←
最近寒くなってきました。毎日寒いって騒いでます。
あと梅干し最強ですね。あれがあればご飯いくらでも食べられる。
懐炉のありがたみが分かる季節になってきました。年賀状おわらないです。

今回はばらばらなあとがきでしたね!!!!!←
ミナの「エノモンの雑談ルム」ってとこでたまに絵をあげます。是非是非←

コメント、アドバイスお待ちしております(^o^)
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