ひょうし/小説を書こう
声なき笑み。ー下ー
作:芯筆/6年生 女子
静樹は静かで、一緒にいると落ち着いた。喋らないけど、文字盤を叩く音がすれば静樹は話してるんだな、と感じる。一度、静樹が悲しそうにしていた時がある。顔を覗き込んで、
「どうした」
訊くと静樹が静かにしてってお願いしたとき、クラスの奴らに「御前は黙って本の恋人にでもなってればぁ?」と嗤われたらしい。その話を聞いて本を本当に愛している静樹には十分着火する言葉だったが、先に覚えたのは怒りではなく悲しみだった。
本が馬鹿にされる苦しさ。
”コイビト”に暗に含まれる蓮への当て付け。特に後者に、傷ついた。
許せないと思った。それ以上に静樹への愛しさが湧いた。
「静樹・・・気にするなよ」
口下手な僕にはそれ以上は云えない。でも、静樹は僕の不器用さまでわかっているから、これだけで声なき笑みを浮かべる。

「ありがとう」

口がそう動いた。




「うるせぇ黙ってろ、この聾(つんぼ)が!」
朝僕が教室のドアに手を掛けた時、松崎優の声が聞こえた。同時に周りの声が無くなったのも分かった。僕は手をそっと離し、話を聞いた。
「あのなあ、耳わりぃくせしてうるせえってななんだよ!」
優の怒号に周りの静寂が深まるのを感じる。
「・・・あの、つんぼって差別用語ですよね・・・?」
いつもは静かな逢坂志穂の声が聞こえた。
「ああ?!」
優は振り返る。志穂はか細く言葉をつなぐ。
「あの、あまり差別用語大声で叫ばないほうが・・・静樹さんにも、つんぼなんて酷いし・・・」
最後はほぼ聞き取れなかった。
「おい、こっちこい」
優の低音が聞こえた。志穂が震えながら歩く光景が想像できて、―一気に頭に血が昇った。
「ふっざけんな!!」
乱暴に扉を開け、優のもとへ歩み寄った。
「何だよ」
優は下から蓮を睨む。
「つんぼってどれだけ酷い言葉か知ってるか?!そもそも静樹は聾唖者じゃねぇ!」
そこで切ってからちらりと静樹を見る。静樹は小さく頷いた。
「静樹は喋れんだよ!」
ざわッとした。
「でも一時的に喋れなかったんだよ!なんでだと思う?!」
優は懸命にこちらを睨む。蓮は初めて優から目を反らし、全体に怒鳴りつけた。
「こういう差別用語をただ傷つけるために使う馬鹿とそれを見過ごすこのクラスのたった一人を除いた奴等と同等の奴らのせいなんだよ!聾唖者の、何を、知って・・・ッ!!」
悔しかった。侮辱されたこと。
「ごめんなさい・・・喋るの怖くて・・・」
静樹の声にクラス中はっとした。
「ごめんなさい・・・」
俯いた静樹を蓮は呆然と見ていた。
志穂は一緒に俯いて沈痛そうな、歪んだ表情をしている。
静寂にチャイムが響いても、ずっとそのままだった。


静樹は少しずつ話すようになった。―声で。友達も段々増えて、声を立てて笑う声も一日に数回は聞こえる。特に志穂とは親友になれたらしい。女子も男子も続々と謝って、数人は蓮のところまで来た。蓮は誤解を解きたかっただけで、謝られなくても良かったが意味は分かるので黙って頷く。
優は謝らない。その代償に友達は離れていった。静樹がクラスで蓮と話す回数は減ったが、寂しくなかった。
静樹には蓮にしか見せない表情があるから。
殆ど喋ってくれなかった時期と変わらない、穏やかな声なき笑み。

finー

後書き
良し熱中した←
短編だとこのシリーズが一番楽しいかも。こんどスピンオフとか書こうかな。
・・・受験終わったらね。
「つんぼ」という言葉が出てきましたが、実際に出回る本なら間違いなく規制かかります。実際聾者、聾唖者、途中失聴者の区別は健聴者にはしにくいものですが、そのせいで苦しんでいる方もいるそうです。静樹の場合は日本語獲得後、突発性途中難聴に罹り、両耳の聴力をかなり落としました。今では補聴器です。喋れなくなったのは本文の通りです。上の蓮君の推理全部当たってます。
アド、コメお待ちしています。
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