ひょうし/小説を書こう
短編 夏
作:ゆのん♬/中学1年 女子


 ー燃える太陽。

 紫外線がじりじりと僕の肌を焼く。
 何かに誘われた気がして、海の中に足を踏み入れる。
 ぐちゃっとした土に足を入れると、海水が僕を撫でた。
 必死に思い出さないと、僕が何故ここに来たのかさえも分からなくなる。
 一歩下がってみると、深い足跡を潮がそれを消した。
 ーーああ。
   ぼくの思いも、こんな風に消え去ればいいのに。ーー
 
 不意にそんな事を思ってしまって、僕は焦る。
 違うんだ。違うーー
 悪いのはーー


 「ー零くん?」


 はっとして、辺りを見渡す。
 水着姿の家族が2、3組と学校の同級生らしきグループが1組、楽しそうにビーチバレーをしている。
 やはり、『彼女』はいない。
 ほっとしている反面、嘘だろ、そんなはずないんだと連呼する自分がいる。


 「ーわすれちゃった?」

 「ーーえ……」

 そんなはず、ない。
 『君』は海の上にうかんでいた。
 長いストレートの黒髪が靡き、少し見下しているようにも、時に妖艶にも官能的にも見える一重の細めの目。折れてしまいそうなくらい細い腕、白い肌。
 毎日のように着ていた白いレース使いのロングワンピースは、確か僕があげた物だ。
 そして。
 ー足があるはずの場所は透き通り、日差しを受け照り輝く瑠璃色の海が見えたー


 「ねぇ。」
 
 嘘だ。

 「零くー」
 「呼ばないでくれ。」

 僕は遮る。
 これ以上何も聞きたく無かった。
 君の顔は怖くて見ることが出来なかった。


 「もう来ないでくれ。僕を見ないでくれ。」

 「何で?」

 君が笑っているのは声で分かった。


 「私が、怖いの?嫌いなの?」
 「違う!!」

 何が何か分からないけどそれ「だけ」ははっきり言えた。
 僕はー


 「僕は、君が好きだ。」

 大好きだ。世界中で1番好きだ。おかしくなりそうなくらい好きだ。
 
 けど。


 「君を、殺した、のは。」


 涙で視界が揺れる。
 声をかすらせながら言った。




 「ーー僕だから。」



 ーあの日。
 僕は君を車に乗せ、ドライブしていた。
 ホテルのレストランに行く予定だった。
 バイトで一生懸命貯めたお金で、星つきの店を予約した。
 ー鞄には渡す予定だった君の誕生石、トパーズの指輪が入っていた。
 しかし。
 行く途中、予約時間ギリギリだったこともあり僕は乗り慣れていない新品同様の車を限界のスピードで運転していた。
 そしてーー
 電柱にぶつかった。

 気が付いた時には病院のベッドの上で。
 真っ先に君のことを医者に聞いたよ。
 そしたらーー



 「知ってるよ。」


 しゃがみ込む僕の目線に合わせて君は言う。


 「プロポーズしてくれようとしてたことも、ぜーんぶ。」


 君は少女のように笑う。


 「あのね。」


 その瞬間、顔がぐにゃっと歪んだ。


 「私、幸せだった。大好きな零くんがこんなに私の事を愛してくれてて、幸せだった。私は宇宙1番の幸せ者だよ。こんな年で逝くとは思わなかったけど。」


 泣き笑いの顔。


 「こんな年で死なせて、ごめん。」


 僕は君を抱きしめる。
 勿論手に君の感覚は無い。

 けど。
 僕はずっと持ち歩いていた指輪を取り出す。


 「僕と。結婚して下さい。」


 君は微笑んだ。


 「出来ないよ。」


 分かってる。


 「けどーー待ってるから。ずっとずっと待ってるから。だけど、」

 ーー零くんはこっちの世界で幸せになって?

 大泣きする君。
 無理だよ。君以外の人となんて。


 「大丈夫。零くんならきっとできる!」


 はにかむ笑顔もやっぱり。
 大好きだーー

 宝石のように輝く笑顔が、空に消えた。

 ーー幸せになって、お爺さんになってから来てね!

 最後のメッセージが海に煌めく。



 ーー今年も何も知らない顔で、夏はまたやってきたーー
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