ひょうし/小説を書こう
東京存在価値狂命曲@2
作:藍和/6年生 女子

煙草の煙を口に含み、汚れた二酸化炭素を吐き出す。このご時世あまり良い煙ではないが、それほど悪いものでもないと思うのだ。

「嫌…今は…違っ…」
「何時でも勤務時間だろ。金は払うんだから、わきまえろよ」
何気もなく通り過ぎた路地裏から少し高い程の中性的な声と図太い男の声が漏れていた。
「で、も…こんな……トコで…」
「いいじゃねぇか。ほら、早くしろ」
「……ぁ…ぇ」
青年の声が小さく萎んで行く。
そして、震えたか細い声で言った。
「…ごめん…な…さ」
乾いた音が辺りに響く。
青年は頬を打たれふらりと壁に寄り掛かった。

「おーい。あんた、未来ある青年A君に大層な真似してくれるね。汚い性欲こんな小柄な青年君にぶち撒けて何がしたいんだよ。あぁ?」
七滓は青年の腕をむんずと掴み、半ば引き摺りながら清潔な路地裏へ放り投げた。
「…っ!!」
無言で見下ろすと、青年は目で敵意を示す
「清潔そうだ、とは思うけど。したいならちゃんと店に来て…」
「犯したりなんかしない。普通の高校生なら、な。だがそうでもなさそうだし」
「……ほら。やっぱり」
その笑みは何よりも自虐的で冷たく、暗いものに映った。
「ははっ…嘘だよ。高校には行ってないの?」
「中学から行ってないよ。そんな余裕なかったし」
「さっきの男と俺と、接し方が違うのは?」
「あの人は常連で、ねだればよく小遣いくれんの。まぁ……その分色々するけど…」
青年は、池袋駅の裏手にある風俗店で住み込みで働いているという。
「…そういう生活、楽しんでるの?」
「……なんで僕ばっか質問に答えてんのかな」
僕も質問したい。と七滓の袖を掴む。
「名前は訊かないであげる。お兄さんは、なんで僕を助けたの?」
「なんでって…あのままじゃ君、病気になってたんじゃない? あんな不衛生なトコで、さ」
「…わかんないよ。そんな詳しいこと」
青年の一言に、七滓は目を大きく開けた。
「お金貰えれば、何処でもしてた…ってこと?」
「え? ちょっとは考えてたよ。ドロドロではヤらないとか。ネズミのいるとこでも…あんましない、とか…」

七滓は青年の無垢さに恐怖すらした。知らないという事実程怖いものはない。知り過ぎるというのも恐ろしいことではあるが。

「その仕事…辞めなよ。今のままだと死んじゃうんじゃない?」
「…でも…餓死するよりマシ。今は生きてるから」
「そっち方面の病気は苦しい」
「…知ってるよ」
「誰にも明かせないんだ。明かしたら君の店長も、君を捨てちゃうんじゃない?」
「…知ってるってば!!」
青年は泣いていた。
顔を手で覆い、嗚咽を漏らす。
七滓はただただ静かに、その存在を空気に溶かす。
「黙ってよ…もう…お兄さんより…知ってるし」
その声は路地裏で反響し、体を殴る。
「それ以外に何があるの? 身体売るしか…僕には…生きていく道がない…だから、好きでもないのに…こんなことしてる。僕は僕を殺してる…ちゃんと…分かってるから…」
「……ごめんね、青年君。追い詰めるようなことを言った」
七滓は青年の頭をぐしゃぐしゃと撫で、抱き締めた。
「…酷いよ。お兄さん。もう…帰りたくなくなってきちゃった」
「そうか」
ねえ、と青年は温もりにすがる。
「お兄さんが…僕のご主人様になってくれれば…いいのに」
「俺の家に泊まるってこと?」
「ん…僕を好きに、使ってくれていいよ」

青年は指を絡ませ、おねだりをしてみせた。




おなまえはハンドルネームでいいです。
ID
パスワード 
ハンドルネームの後に(本人)をつける つけない
 ログインすると、IDなどが自動的に入ります。
お名前 
男女 女の子  男の子
学年 1年生  2年生  3年生  4年生  5年生  6年生
ようちえん  中学1年  中学2年  中学3年  大人
かんそう