ひょうし/自由掲示版
6月28日18時2分/No.2006
「ねぇ、蒼」

彼はそう呟いて泣いた。彼のなめらかな頬を伝って、涙はぽとりと床に落ちる。俺は何もできずにただ、泣いている彼を眺めているだけだった。

「ぼくのおかあさんとおとうさんね、いないんだ」

彼は苦しそうに俯いて、また涙をぽろぽろとこぼす。水晶みたいだと思った。舐めたらきっと塩辛くて不味いだろう。

「ぼくが赤ちゃんの時に、ふたりとも、死んじゃってね。それからは、おばあちゃんが育ててくれたんだけど」

俺よりも小さい彼の身体は、簡素なスーツに包まれていた。黒いスーツ。黒い靴。全身黒づくめの彼は体を震わせて、ぐすっと鼻をすする。


「でも、おばあちゃんも、いなくなっちゃった」


彼の背後から見えるステンドガラスは、いつもよりもずうっと神々しかった。腹立たしいほどに。

「ねぇ、どうしよう」

俺は彼の涙を指で拭う。慰めの言葉はかけられなかった。父親も母親もいる俺が、可哀想な彼になにかを言える権利なんてない。

「蒼、あおい、は、ぼくのこと、おいていかないで」


彼の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。俺は、彼の言葉に返事をすることができず、ただ黙っていた。かわいそうな彼。彼に優しい言葉もかけてあげられない情けない俺。


「おねがい、おねがい。やくそく、だよ」


どこか遠くで、鐘が鳴ったような気がする。彼は泣き止まない。






これで最後です。本当の本当にさようなら。いつか、どこかで会えるといいですね。
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